文化遺産国際協力コンソーシアム 「海と文化遺産-海が繋ぐヒトとモノ-」シンポジウムを開催します(2021.11.28)

令和3年度 文化遺産国際協力コンソーシアム 「海と文化遺産-海が繋ぐヒトとモノ-」シンポジウム

趣旨

絶え間なく波が打ち寄せる、青々とした海。地球の約70パーセントを占める海。この海からヒトとモノの交流を見ると、一体、どのような景色が見えてくるでしょうか。

海は、私たちに豊かな恵みをもたらすだけでなく、古来よりヒトとモノが行き来する舞台であり、「道」でもありました。

陸上の「道」と同様、「海の道」もヒトとモノの交流の舞台であったことは間違いありません。ヒトは、危険が待ち受けることを知りながら果敢に海へと漕ぎ出し、海のかなたに広がる別の世界を目指してきました海を介して出会った異なる文化は、新たな文化や文明、そして、現在の世界を生み出したのです。

このようなヒトとモノの交流の舞台、そして海の道とともに育まれた人々の営みや当時の社会、歴史、文化を物語る証人として、海に関わる文化遺産が世界各地に残されています。それらは、ガラスや陶磁器といった交易品や、海と陸の接点となる港町、海底に横たわる沈没船など有形のものから、漁に関わる技術や航海術、海の信仰など無形のものまで、多岐にわたります。近年では水中にある文化遺産の調査も進み、最先端の技術や分析手法を通じて、海を介して運ばれてきたモノの由来も具体的に解明できるようになってきました。

一方、世界の歴史を考える上でも、「海」が果たしてきた役割に着目し、地域間の相互関係の全体像として地球規模にとらえ直そうとする見方が大きな流れの1つとなっています。これに伴って、海を介した交流を示す文化遺産の調査や研究、そして保護においても新たな視点が求められています。このような状況を受けて、文化遺産国際協力コンソーシアムでは2020年度より、海に関わる文化遺産を対象に、

国際協力調査「海域交流ネットワークと文化遺産」を実施してきました。

くしくも2021年は「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」の1年目にあたります。古くからのヒトと海の関わり、そしてその証拠となる文化遺産を新たな視点で見つめ直すことは、これからの持続可能な海の利用を考える上でも重要なカギとなることが期待されます。

本シンポジウムでは、ヒトとモノの交流の舞台としての「海」を見つめ直すため、海に関わる文化遺産をめぐる国際的な研究や保護の動向、世界各地における海の文化遺産にまつわる取り組みの事例や日本人研究者の関わりを紹介するとともに、この分野での国際協力に日本が果たしうる役割についても考えたいと思います。

プログラム:

14:00 開会挨拶 友田正彦(文化遺産国際協力コンソーシアム事務局) 

14:05 趣旨説明 石村智(東京文化財研究所)

14:20 「沈没船研究の魅力と意義 ―うみのタイムカプセル」 佐々木蘭貞(一般社団法人うみの考古学ラボ)

水中考古学分野における最近の動向と今後の展望について、おもに調査技術の進化という観点から紹介します。

海の中の文化遺産を調べることでどのような情報がもたらされるのか、を中心に解説します。

14:40 「海の路を拓く―船・航海・造船」 木村淳(東海大学)

海域交流は、造船技術と航海術の進歩に支えられながら、グローバルで自由な移動へと発展を遂げてきました。

その歴史を、海事考古学の研究成果をもとに紹介します。

15:00 「海を越えたガラスビーズ―東西交易とガラスの道」 田村朋美(奈良文化財研究所)

アジア各地に残るガラス製品を科学的に分析し、産地等を明らかにすることによって、

その当時における世界のつながりが見えてきます。古代の東西交易のあり様を紹介します。

15:20 「海を行きかう人々 ―海を渡ったイスラーム商人、特にホルムズ商人について」 四日市康博(立教大学)

海の交易圏を拡大し、文化の交流の前線を担った集団の一つがイスラム商人です。

前近代のユーラシアと海域アジアの東西交易を担った彼らはどのような人々だったのでしょうか。おもに文献史学の研究成果をもとに紹介します。

15:40 「海と陸がまじわる場所 ―アジア海域世界の港市:店屋(ショップハウス)と四合院(コートハウス)」 

布野修司(日本大学)

東西交易の中心地であり、海と陸とのハブを担ったのが各地の港市です。インドや東南アジアの歴史的港市における建築遺産に焦点を当てながら、

当時の人々の営みや海域交流の様相を明らかにしていきます。

16:00 フォーラム『海によってつながる世界』 

モデレーター:石村智 コメンテーター:周藤芳幸(名古屋大学)、伊藤伸幸(名古屋大学)

講演ではおもにユーラシア南岸海域での事例を取り上げますが、世界の他地域では海域交流にどのような視線が向けられ、

各地の文化と文化遺産の理解にどのように関連づけられるのでしょうか。調査研究の成果を共有するとともに、国際的な協力の現状について議論したいと思います。また、日本の文化遺産保護とこの分野での国際協力活動を今後展開していくにあたって、

海域史の視点がどのように貢献できるのか、意見を交わします。

16:50  閉会挨拶 山内和也(帝京大学文化財研究所)

※合計3時間

主催:文化遺産国際協力コンソーシアム、文化庁

日時:2021年11月28日(日) 14:00-17:00 (13:45 接続開始)

開催方式:オンライン(Zoom ウェビナー)

言語:日本語

参加費:無料(要事前登録)

申込方法:フォームよりご登録ください。

※受付完了後、ご登録のメールアドレス宛に確認メールを送信します。その後、11月25日(木)までに、ウェビナーのURLが記載されたメールが届きます。

申込締切:2021年11月21日(日)

ご視聴にあたってのご注意:

※Zoomへの接続や、機器・ソフトウェアの使用に関するお問い合わせには対応できかねますので、

初めてZoomを利用される方は、事前にご自身で接続テストを行っていただくことをお勧めいたします。

※Zoomウェビナーでは、聴衆側のカメラ・マイクはオフに設定させていただきます。

お問合せ先:

文化遺産国際協力コンソーシアム事務局

独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所 所内

Tel: 03-3823-4841

Fax: 03-3823-4027

E-mail: consortium@tobunken.go.jp

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